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心因性ED(勃起不全)の治療とICI療法について

 

ICI療法について解説します。

院長:山本(医師)監修
1)ICI療法の歴史
2)ICI療法の基礎を学ぼう!
3)心因性EDとICI療法
4)手術後のEDとICI療法
5)ICI療法を用いた行動療法
6)ICI療法の対象者|飲み薬が効かない・使えない方

 

心因性ED(勃起不全)の治療とICI療法について

 

当院では心因性EDの行動療法を行っています。

 

(目次)
1)心因性EDについて
2)心因性EDの治療法について

 

はじめに

EDには主に、身体機能的に勃起を起こすことができない器質性EDと精神的なことが原因で勃起を起こすことができない心因性EDの2種類があります。

 

ここでは、心因性EDのリハビリテーションにおけるICI療法の効果について、海外の論文や医学雑誌から要約してその有効性について解説していきたいと思います。

 

1)心因性EDについて

心因性EDは、特に心理的・精神的な要因から起こるEDのことを言います。

 

精神疾患(うつ病や統合失調症)といったものだけが原因ではありません。

 

社会生活を送るうえでのストレスや家庭における生活のストレスなど、人によってその原因はさまざまです。特に心因性EDに悩む男性は、その原因がわからないために一人で悩むケースが多くなるようです。

 

特に、年齢を重ねるにつれて起こりやすくなる器質性EDと異なり、心因性EDは比較的若年層でも起こりやすいことも特徴です。

 

若年層の場合には、病院に行ったり誰かに相談したりすることを躊躇して、1人で様々な努力を行うことが多いようです。

 

しかしながら、逆にかえって、症状を悪化させたり、劣等感を生み出したりしているようです。

 

心因性EDに場合には1人で解決せず、専門家に相談したり、パートナーとともに解決を目指そうとしたりする心持ちが大事なようです。

 

また、アルコール中毒や薬物依存も、精神疾患に入るためそれによって起こるEDも心因性EDの一つになります。

石橋2

 

2)心因性EDの治療法について

心因性EDの治療法としては、PDE5阻害剤が有効である場合が多くみられるようです。日本では、バイアグラとレビトラ、シアリスの3種類が認可されています。

 

日本では、最もメジャーな治療法であるようです。また、PDE5阻害剤を服用する利点としては、「PDE5阻害剤を飲んでいるから今日は大丈夫」というプラセボ的な効果もあるようです。

 

しかし、PDE5阻害剤を服用する欠点としては、循環器障害を患っている男性の場合には使えないことがある、ということです。狭心症や動脈硬化の薬を処方している場合には、PDE5阻害剤の服用には注意する必要があります。

 

また、ストレスや疲れが極度に溜まっていたり、性行為に対して強い不安があったりする場合には、PDE5阻害剤の効果は発揮されないこともあるようです。心因性のEDの場合には、カウンセリングや行動療法といった心理学的な側面から治療を行う方法もあります。

 

心理療法を専門とする専門家によってカウンセリングを行うことにより、EDを起こす原因となる要因を取り除くことを目的とします。

 

1度や2度ではなく、繰り返しカウンセリングを受け、長い時間をかけることが必要なようです。性行為に対する強い不安感や嫌悪感、またトラウマなど、長い時間をかけて取り除く必要があります。

 

また、パートナーとの関係性によって起こる心因性EDでは、カップルでのカウンセリングが必要となることがあるようです。カップルの間の問題点をカウンセリングによって取り除きます。そして、それに伴う心因性EDやセックスレスなどの問題点を克服します。
また、ICI療法という治療法もあります。日本ではまだメジャーではありませんが、海外では一般的に行われている治療法になります。ICIとは“intercavernous injection”の略になります。これを日本語にすると「陰茎海綿体注射」ということになります。

 

その名の通り、プロスタグランジンをベースとして複数の薬剤を混ぜた薬剤を海綿体に注射することによって、EDを克服する治療法です。

 

現在日本で最もメジャーな治療法であるPDE5阻害剤でEDが治療できなかった男性の方や、そもそもPDE5阻害剤を用いることができない循環障害を患った男性の方でも治療を受けられることが大きな利点になります。

 

以下、ICI療法の有効性について論文を引用して紹介していきます。

 

“Department of Urology, Okayama University Graduate School of Medicine and Dentistry”(2005)による論文では、PDE5阻害剤でEDが改善しなかった男性にプロスタグランジンE1の海綿体注射が有効であることを提唱しています。その内容は以下のようになります。

 

ED治療にPDE5阻害剤を用いた総勢243人の患者のうち、満足のいく性交を行うことに十分な勃起が得られなかった64人の患者が被験者となった。1mLの生理食塩水の中に20または40μgのプロスタグランジンE1を混ぜたものが64人の患者に注射され、その効果が評価された。

 

その結果として、64人のうち49人はプロスタグランジンE1の20μgの注射で勃起が起こった。残り15人には40μgのプロスタグランジンE1が注射された。その結果、9人の患者で勃起の改善が見られた。

 

全体として、64人の患者のうち、58人の患者でEDの改善が見られた。つまり、91%の割合でEDの改善が見られたということである。また、大きな副作用も見られなかった。

 

“Geriatric Medicine”47巻10月号(2009)には、ICI療法について述べられているので要約します。
東邦大学医学部泌尿器科では東邦大学医療センター大森病院の倫理委員会の承認を得てプロスタグランジンE1に検査および、自己注射を積極的に行っている。(2009年)ICIテストを98例におこなった。患者の平均年齢は58歳(26~80歳)である。PDE5阻害薬無効例94例、PDE5阻害薬禁忌例が4例であった。

 

患者の内訳は以下のようになる。自己注射の自主研究に参加したのは50例で、糖尿病21例、高血圧症13例、心血管疾患21例、脊椎疾患(脊柱管狭窄症)4例、精神疾患(うつ病や適応障害)3例、骨盤内悪性手術後11例(前立腺・膀胱摘出:8例、直腸癌術後:3例)である。

 

ICIテストの評価方法は、ISSM(国際性機能学会)のレスポンススコアを用いた。これは、レスポンス0~レスポンスⅣまで段階に分け、レスポンス0:反応なし、レスポンスⅠ:腫脹するが硬度、持続とも不十分、レスポンスⅡ:硬度は不十分であるが持続しない。

 

レスポンスⅢ:硬度、持続ともに不十分、レスポンスⅣ:勃起が遷延する(持続勃起症)と定義する。98例のうち、レスポンスⅢと判断された症例が45例であり、有効率は46%であった。詳細を述べると、レスポンスⅢ43例とレスポンスⅡ7例がICI自己注射を行った。

 

また、レスポンスⅡの2例がPDE5阻害剤に戻った。レスポンスⅠ・Ⅱに46例が他の治療を行った。(VCDが6例、陰茎プロテーシス手術27例、血行再建8例)。

 

また、ICI自己注射では、陰茎痛が2例のみ報告され、それ以外には重篤な副作用は見られなかった。

 

このように、PDE5阻害剤無効例に対して、有効率は下がるが、副作用も少ないため、医師の指導の下に行えば安全な治療であると考えられる。

 

PDE5阻害薬出現前には、1996年にOtto ILらのICIについての報告もある。この報告によると、有効率は82%で副作用は陰茎痛50%、勃起の遷延(4~6時間)5%、持続勃起症1%、海綿体線維化2%、不整脈・めまい・顔面紅潮など1%で、有効率が大きい反面、副作用も多かった。

 

このほかにも、海外でICI療法について書かれている論文はありますが、多くが1995年あたりに書かれたものでした。これは、ICI療法が比較的前から注目されていたことを示唆しています。

 

また、1996年には副作用の多かったICI療法も、10年後には上の論文から分かるように、できるだけ副作用をもたらさない方法やPDE5阻害剤を服用できない患者への応用も進んでいることが分かると思います。

 

とくに、2005年の岡山大学医学部大学院泌尿器科の報告は、被験者は少ないものの91%の有効率を報告している点でED治療に革新をもたらしたと言えます。

 

ICI療法の研究は滞ることなく、2016年現在プロスタグランジンをベースに他の薬剤を混ぜることによって、患者個人に有効な治療法を提供できるまでに至りました。

 

より副作用を小さくし、より大きな効果をもたらすことができるようになっています。心因性EDでPDE5阻害剤を服用してもEDが改善しなかった、またはPDE5阻害剤を服用できない患者にとって、ICI療法は選択肢のひとつであることを多くの人にしってもらいたいと思います。

 

参考文献
Atsushi Nagai & et al (2005) Intracavernous injection of prostaglandin E1 is effective in patients with erectile dysfunction not responding to phosphodiesterase 5 inhibitors. Acta Medica Okayama Vol.59 No.6, pp.279-280
Geriatric Medicine 47巻 10月号 p1279~1284
Otto IL et al: Efficacy and safety of intracavernous alprostadil in men with erectile dyasfunction. N engl J Med 334:873-877, 1996.

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