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前立腺肥大症とは?(原因から治療法まで)

前立腺とEDの関係について解説します。

院長:山本(医師)監修

1)前立腺と男性機能の関係について
2)前立腺肥大症について
3)前立腺癌はどのような病気なのか?
4)前立腺肥大症で起きるED
5)外科手術後のEDとICI療法

 

前立腺肥大症とは?(原因から治療法まで)

 

(目次)
1)前立腺とはどんな臓器なんだろう?
2)前立腺肥大症はどんな病気なのか?
3)どんな症状がでたら前立腺肥大症を考えるんだろう?
4)どんな検査で前立腺肥大症であるとわかるんだろう?
5)まとめ

 

 

はじめに

みなさんこんにちは。前立腺肥大症という病気が近年話題になっています。前立腺肥大症は高齢者のおしっこのトラブルの原因となる病気で、テレビの健康番組でもよく取り上げられています。この記事では前立腺肥大症の原因から始まり、診断法、治療法について順番に説明していきます。イラストをまじえながら分かりやすい言葉で説明してありますので、最後まで一緒に学んで行きましょう!

 

1)前立腺とはどんな臓器なんだろう?

はじめに前立腺について簡単にまとめます。前立腺は男性にのみ存在する、正常ではクルミくらいの大きさの臓器です。前立腺は膀胱の下で、直腸の前に存在します。(直腸の前にあることは診断の章で大切な知識なので、よく覚えておいてください。) 前立腺には尿道が貫いており、射精管が尿道に合流します。前立腺からの分泌物は精液の一部となり、精子の運動を活発にする働きを持っています。

前立腺は4つのパートに分けられます。このうち臨床的に重要なのは、尿道の周りを取り囲む移行領域というところと、辺縁領域と呼ばれるところです。前立腺肥大症は移行領域におこる病気です。

 

2)前立腺肥大症はどんな病気なのか?

前立腺肥大症とは年をとるにつれて、移行領域が肥大=大きくなっていく病気です。前立腺には分泌液を出す上皮細胞と、上皮細胞を支える間質細胞からなりますが、この両方が数が増え、しかも1つ1つの細胞が大きくなる「過形成」という変化がおきるため、移行領域が大きくなってしまうのです。前立腺は年をとるにつれて大きくなり、50~60歳代では50%、80歳では90%に肥大が見られると言われています。(必ずしも肥大が見られると症状がでるというわけではありません。)

 

前立腺が大きくなるのは男性ホルモンの働きが原因と言われています。精巣や副腎から分泌される男性ホルモン(アンドロゲン)は、移行領域の細胞に働きかけて太らせる作用を持っているため、前立腺肥大症がおこると考えられています。

 

3)どんな症状がでたら前立腺肥大症を考えるんだろう?

前立腺肥大症は排尿トラブルを引き起こします。先ほど説明したように、前立腺肥大症は移行領域によく起こるのでしたね。移行領域には尿道が通っており、移行領域が肥大すると尿道が圧迫されて、おしっこの通り道を細くしてしまいます。すると、おしっこのでる勢いが弱くなります。図1をみてください。一度に膀胱にあるすべてのおしっこが出しづらくなるため、残尿感を覚えたり、おしっこに行く回数が多くなる(頻尿)も起こることがあります。もし完全に閉塞してしまうと、おしっこが膀胱にとどまってしまう尿閉という状態になります。おしっこが外に出ていかなくなりますから、尿管から腎臓までおしっこがうっ滞した水腎症と呼ばれる状態になり、腎臓にもダメージが加わることがあります。おしっこがうっ滞していると、バイキンによる感染が起こりやすくなるので注意が必要です。

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4)どんな検査で前立腺肥大症であるとわかるんだろう?

前章で前立腺肥大症では様々な症状がでることが理解できたと思います。それではどのように前立腺肥大症は診断するのでしょう?

 

<診断方法① 直腸診>
直腸診は直接、前立腺を指で触る診断方法です。冒頭で前立腺が直腸の前にあることを覚えておいてくださいねとお話しました。このことを理解していると、直腸診がどのようなものか理解がしやすくなるからです。直腸診ではお尻の穴から指をいれて直腸まで進めます。すると前立腺の後ろの部分を触ることができますね。正常の前立腺はクルミくらいの大きさで、左右対称で軟らかく触れます。前立腺肥大症ではクルミよりも大きくなり、正常よりも固く触れます。左右が非対称になることもあります。(前立腺がんでは表面がデコボコするのに対して、正常の前立腺や前立腺肥大症では表面はツルツルなので、前立腺がんを除外できるという意味で直腸診は行われます。)

 

<診断方法② PSA>
PSAとは前立腺特異抗原(PSA prostate specific antigen)のことです。PSAは前立腺の上皮細胞で産生されるタンパク質です。正常では血中のPSAはとても低い値です。前立腺肥大症では細胞が過形成をおこすので、PSAの値は正常から軽度高値になります。前立腺がんではPSAの値がとても高くなります。つまり、PSAの値を測定して前立腺がんではないと否定することができるのです。(実際には前立腺肥大症でもPSAが上昇することがあるので、他の検査も行って総合的に診断をつけます。)

 

<診断方法③ 超音波検査>
今までの検査2つは前立腺がんではないと言うための検査でしたが、超音波検査(エコー)は前立腺肥大症であると診断をすることができます。エコーでは超音波を当てて跳ね返ってきたものを画像にします。図2を見てください。超音波を出す機械をお腹の上にあてて前から前立腺を見る方法と、お尻の穴にいれて後ろから前立腺を見る方法があります。お腹の上からよりも、お尻の穴からの方が、より前立腺に近いところから観察できるので後者がベターです。お尻の穴からの超音波検査の画像から、正常と比べて、前立腺肥大症では移行領域を中心として前立腺が大きくなっているのがわかります。

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<診断方法④ 尿量測定>
尿量測定とは、患者さんのおしっこをしてもらい、そのときの様子をグラフにしたものです。図3を見てください。グラフでは横軸をおしっこをするのにかかった時間、縦軸はおしっこのでる速さを表したものです。正常な人と比べて、前立腺肥大症の患者さんは、おしっこが出づらいために、おしっこの速さのピークが下がり、時間も長くなっています。

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以上4つの検査を総合して前立腺肥大症という診断をつけていきます。他にもI-PSS(国際前立腺症状スコア)というものを患者さんに記入してもらい、前立腺肥大症がどのくらい重症なのかを判断することもあります。

5)前立腺肥大症を治療しよう!

前立腺肥大症の治療は大きく分けて2つあります。

 

<治療方法① 薬>
前立腺肥大症の患者さんには、まず薬による治療を行います。1番効果があると言われているのは、α1受容体遮断薬という薬です。α1受容体に刺激が加わると、前立腺の平滑筋が収縮するのでおしっこの通り道が狭くなります。図4を見てください。α1受容体の働きを抑える、α1受容体遮断薬は平滑筋をゆるめておしっこの通り道を広くする薬です。これにより前立腺肥大症の患者さんの排尿トラブルが改善します。

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また、前立腺肥大症は男性ホルモン(アンドロゲン)が原因であるというお話をしましたが、アンドロゲンの働きを抑える抗アンドロゲン薬も使われています。抗アンドロゲン薬の中で最も一般的なのは5α還元酵素阻害薬です。この薬も男性ホルモンによって前立腺肥大がおこり、尿道を狭窄するのを防ぐ役割があります。

 

<治療方法② 手術>
薬で効果がなかった場合や、排尿トラブルが重症なときは手術が行われます。TUPR(経尿道的前立腺切除術)がスタンダードな手術方法です。TUPRとは尿道から機械を入れて、前立腺の中を通る尿道に達したあと、そこで内側から前立腺を削って行く方法です。これによって前立腺肥大症による排尿トラブルが解消されます。開放手術という手術方法もありますが、TUPRの方が血が出る量が少なく済むため、TUPRのほうがベターです。前立腺肥大の程度が大きい場合には開放手術が行われます。近年はレーザーを用いた治療の治療効果がよいことがわかってきたため、そちらがおこなわれることもあります。

 

まとめ

いかがだったでしょうか? ここまで前立腺肥大症の原因、診断、治療について詳しく見てきました。複雑でわかりづらいところもあったと思うので、ここでまとめておきましょう。

・前立腺肥大症は加齢とともに移行領域が大きくなる病気である。
・症状は排尿トラブル(残尿感、頻尿)である。
・直腸診、PSA測定、超音波検査、尿量測定で診断をつける。
・治療は薬(α1受容体遮断薬や5α還元酵素阻害薬)が基本で、場合によっては手術(TUPR)を行う

前立腺肥大症は高齢者のおしっこのトラブルとなる重要な疾患です。しっかり理解しておきましょう。また、前立腺にできるもう1つ重要な病気に前立腺がんがあります。前立腺肥大症とがんを対比させることで、両方の病気をより深く理解できるので、他の記事も読んでみてください。最後まで読んで下さりありがとうございました。

 - 前立腺・ED