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前立腺肥大症により起きるED(勃起不全)とは?

ICIクリニック:院長山本医師(監修)

このコーナーでは、前立腺のメカニズムとその病態について。1)前立腺と男性機能の関係について、2)前立腺肥大症について、・3)前立腺癌はどのような病気なのか?、また・4)前立腺肥大症で起きるED について解説しています。術後EDについても5)外科手術後のEDとICI療法、で解説しました。

 

(目次)
1)前立腺とは
2)前立腺の働き
3)前立腺肥大症は悪性の病気ではない!
4)前立腺肥大症のメカニズム
5)前立腺肥大症の症状
6)前立腺肥大症とEDの関係
7)まとめ

 

はじめに

前立腺肥大症という病気の名前を皆さん聞かれたことがあるかと思います。最近ではテレビや新聞でも多く目にするものでしょう。前立腺肥大症とはどのような病気でEDとどのような関係にあるのかについてこの記事では解説していきます。

 

1)前立腺とは

男性のみが持つ器官で、男性の生殖機能に関係しています。ですから前立腺がんや前立腺肥大症などの前立腺の病気になるのは男性だけであって、女性がなることはありません。

 

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前立腺は医学の教科書を見てみると「クルミくらいの大きさ」と書いてあります。

 

クルミってどれくらいの大きさなのかあまりわからない人が多いと思います。

 

だいたい3cm~5cmと補足しておきます。さて、このクルミくらい(3cm~5cm)の大きさの前立腺は、膀胱の真下にぴったりと張り付いたような格好をしています。

 

膀胱は尿をためる器官ですから、ここから尿道が出ているわけですが、尿道は膀胱から下に向かいますから、ちょうど尿道が前立腺を貫くように走っています。

 

この「尿道が前立腺を貫いている」ということはあとでとても重要になりますから覚えておいてください。(図1)

 

2)前立腺の働き

前立腺は男性の生殖器官の一つですから、生殖機能に大きくかかわってきます。

 

前立腺は前立腺液と呼ばれる液体を分泌します。これはいつでも分泌されているわけではありません。男性が射精する際に精子などとともに放出されるのです。

 

ところで、射精する際に出る精液の大半が精子だと皆さんお考えではないでしょうか。実はこれは違います。精子は精液の3%程度を占めるに過ぎません。前立腺液は精液の5~10%にあたり、精子に栄養を与えたり精子を活性化したりしています。

 

精子機能する上でとても重要な働きを果たしているのです。ところで精液の残りの90%ほどは精嚢液と呼ばれるもので、これまた精嚢という器官が前立腺の近くにあって、ここから分泌されています。

 

前立腺は男性の生殖機能について非常に大切な働きを担っていることが分かったところで、次の章からはいよいよ前立腺肥大症の説明に入っていきます。

 

3)前立腺肥大症は悪性の病気ではない!

前立腺肥大症とは、名前のとおり前立腺が大きくなってしまう病気です。

 

前立腺の細胞が増殖して前立腺自体が大きくなるのです。しかしここでまず強調しておきたい点は、前立腺肥大症は前立腺がんと全く異なるということです。

 

前立腺肥大症は確かに細胞の数が増えて前立腺が大きくなりますが、これはがん細胞が増えて前立腺が大きくなるのとは異なります。前立腺肥大症で増えるのは正常の細胞であってがん細胞ではありません、ですから他の臓器を攻撃したり、転移したりすることはありません。

 

一方のがん細胞は周りの臓器を攻撃したり、転移したり、転移した先で悪さを働きたりするわけです。つまりは、前立腺肥大症は良性の病気であって、前立腺がんのように悪性の病期ではないということをここで強調しておきたいわけです。

 

4)前立腺肥大症のメカニズム

前立腺肥大症はさきほどお話したように前立腺の正常の細胞が増えてしまう病気です。

 

前立腺のなかでも、尿道を取り囲んでいる移行領域と呼ばれる場所の細胞が増えます。この細胞は勝手に増えるのではなく、男性ホルモンの作用で増えます。男性ホルモンは前立腺まで来ると5α還元酵素という物質の作用によりDHT(ジヒドロテストステロン)という物質に変わります。

 

この物質が移行領域の細胞に作用することで、これらが増殖するわけです。下の図を参考に前立腺肥大症のメカニズムを整理してくださいね。

 

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また、前立腺肥大症には男性ホルモンが関わっているわけですから、男性ホルモンの影響を長年受けた人、つまりは高齢者に多く前立腺肥大症が見られます。

 

このことから分かるように年をとるにつれてなりやすくなる病気なのです。50歳代では50%、80歳代では実に90%の人の前立腺が肥大していると言われています。このように前立腺肥大症はとてもありふれた病気なのです。

 

5)前立腺肥大症の症状

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ここからは前立腺肥大症の症状について説明していきます。よくお年寄りの方が「最近トイレが近くて…」とおっしゃっているのを耳にする方もいるかもしれませんが、これは前立腺肥大症の症状かもしれません(もちろん男性限定です)。前立腺肥大症は前立腺の細胞が増える、特に移行領域と呼ばれる場所の細胞が増えるのでした。

 

この移行領域は尿道の周りを取り囲んでいるので、尿道を圧迫して排尿困難(尿が出にくくなる)が起こります。また、前立腺自体が膀胱の真下にありますので、膀胱を刺激して膀胱刺激症状(頻尿、圧迫感など)が起こります。これらの症状の進行状態から、前立腺肥大症の症状は大きく3つに分けることができます。

 

①膀胱刺激期、②残尿発生期、③慢性尿閉期の3つです。これらについて以下に解説します。
・①膀胱刺激期
この時期の症状は肥大した前立腺が上にある膀胱を刺激することで起こります。こうして膀胱が刺激されることで頻尿になりトイレが近くなるわけです。ただ、実際には尿がたくさんたまっているわけではなく、膀胱の中には少量の尿しかありませんから、せっかくトイレに行ってもあまり尿は出ません。

 

ですから前立腺肥大症の患者さんは寝ているときも尿意で起きたりしますが、トイレに行ってみるとあまり出ないという症状を訴えます。また、尿道も圧迫されますが、そこまで強く圧迫されるわけではないので、排尿困難(尿が出にくくなる)はあっても軽度です。以上が膀胱刺激期の症状です。
・②残尿発生期
前立腺肥大症がもう少し進行してくると、前立腺がさらに膀胱を刺激することでますます頻尿になります。前立腺肥大症になる前よりもさらにトイレに行く頻度が増し、日に10回以上トイレに行くようになります。また、尿道の圧迫もどんどん強くなりますので、排尿困難が前よりも強くなり、尿の出にくさを強く自覚するようになります。

 

こうなると、膀胱内の尿をすべて出し切ることが出来なくなり、排尿が終わっても膀胱の中に尿が残ってしまう、つまり残尿が起こります。ですからこの時期のことを残尿発生期と呼ぶわけです。患者さんによっては残尿感を訴える方もいらっしゃいます。

 

また、ただ残尿するだけならよいのですが、尿が膀胱の中に長く留まるために、感染を起こして膀胱炎が起こることもあります。
・③慢性尿閉期
前立腺肥大症がさらに進行すると膀胱と尿道がさらに強く圧迫され、いよいよほとんど尿が出なくなってしまいます。こうなると尿があまり出ないので残尿が多くなり、トイレに行っても膀胱の中に多くの尿が残ることになります。このようにほとんど尿が出なくなることを尿閉といいます。

 

この尿閉がずっと続くので、この時期は慢性尿閉期と呼ばれます。さらに、膀胱に溜められる尿量の限界を超えると尿が腎臓へ逆流し、腎臓がパンパンに膨れる水腎症になります。

 

水腎症がずっと続くと腎臓の機能が低下して腎不全になってしまうので、ここまで進行すると注意が必要です。
以上が前立腺肥大症の症状でした。前立腺肥大症は治療すれば確実に良くなる病気ですので、症状の軽い早いうちに治療しましょう。

 

 

6)前立腺肥大症とEDの関係

前立腺肥大症になるとEDになりやすいのか、あるいはEDになると前立腺肥大症になりやすいのかという関係は、実際には医学的に証明されたものはありません。

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ですが、EDがよくなると前立腺肥大症がよくなるということはあるようです。これはEDの治療に使われる薬の一つが前立腺肥大症にも効くからだといわれています。EDの治療にホスホジエスタラーゼ5(PDE5)阻害薬という薬が使われています。

 

ここからこの薬の効くメカニズムを簡単に説明します。性的刺激によって脳から神経刺激が伝わってきます。すると神経の先端から一酸化窒素が放出されます。一酸化窒素はグアニル酸シクラーゼという酵素を活性化して、cGMP(サイクリックGMP)という物質を作ります。

 

このcGMPが血管を締める平滑筋を弛緩させて、血流量が多くなることで勃起が起こります。ところが、PDE5という物質は勃起するのに必要な一酸化窒素を分解してしまいます。こうなると勃起が起こりにくくなるわけです。ですから、PDE5阻害薬によってこのPDE5を抑えてやればEDが改善するわけですね。

 

ところで、cGMPは陰茎の平滑筋だけでなく、前立腺の平滑筋にも働きます。これにより前立腺の平滑筋が緩むので、前立腺氏代償による膀胱や尿道への圧迫が改善して、前立腺肥大症も良くなるわけですね。以上がEDで使われる薬が前立腺肥大症でも使われる理由です。

 

まとめ

今回は前立腺肥大症について解説してきました。立腺肥大症は加齢とともになりやすくなる病気で、良性の病気です。ですが、症状が進めば腎不全になってしまいますので、なるべく早いうちに治療したほうが良いですね。

 

頻尿、残尿感などの症状が出たら一度泌尿器科へ行って検査したほうが良いでしょう。この記事が皆さんのお役に立てれば幸いです。

 - 前立腺・ED